福田新社長をよろしくお願いいたします

以下、SAPジャパンのプレスリリースを転載。
SAPジャパン、役員人事のお知らせ
Tokyo - 2014年 07月 28日 | SAP - 企業情報
SAPジャパン(本社:東京都千代田区代表取締役社長:福田 譲、以下SAPジャパン)は、下記の通り、2014年7月28日付けで、福田 譲がSAPジャパンの代表取締役社長に就任したことを発表しました。福田は、SAPアジアパシフィックジャパン地域のプレジデントであるアデア・フォックス・マーティンにレポートし、日本におけるSAPの全ての事業戦略と活動を統括します。

フォックス・マーティンは次のように述べています。「世界の経済をリードしテクノロジーの中心となる日本市場は、SAPにとってまぎれもなく重要な市場です。福田のリーダーシップのもと、SAPジャパンが日本における企業のグローバル化イノベーションおよび成長を支援していくと確信しています」

SAPジャパンは、現在、クラウドカンパニーに向け大きく変革を行っています。本社のSAP SEは、本年4月にアジア太平洋地域で初となるデータセンターを開設するなど、日本を重要拠点と位置付け、投資を強化しています。SAPジャパンは、今後、新しい世代のリーダーのもと、このクラウドカンパニーへの変革に向けた流れをさらに加速していきます。

福田は下記の様に述べています。「SAPの先進的なイノベーションとソリューション・サービスは、日本企業が真のグローバル競争や市場の変質を勝ち抜くために大きく貢献できます。 素晴らしいチームメンバーとともに、日本のお客様・パートナー様の成功に一丸となって取り組みます」

福田は、1997年4月にSAPジャパンに入社、プロセス製造業の大手顧客を担当し、ERP(基幹業務統合システム)導入による業務改革(BPR)・経営改革・情報化の提案活動に従事しました。
2002年4月以降、化学/石油業界の大手顧客担当、中堅/中小顧客担当、食品/消費財/医薬/小売大手顧客担当の営業部長を歴任、2007年に新規製品事業(Platform製品事業)を統括するバイスプレジデントに就任し、ミドルウェア、ビジネスインテリジェンス(BI)、経営管理ソリューション(EPM)事業や、SAPが買収したビジネスオブジェクツ社日本法人の統合を指揮しました。
2011年から、特定戦略顧客、流通・サービス業、通信・メディア業、プロセス製造業等の営業部門長を歴任しました。

【新任 2014年7月28日付】
氏名:福田 譲(ふくだ ゆずる)
新職:代表取締役社長
旧職:バイスプレジデント プロセス営業統括本部 統括本部長

【退任 2014年7月28日付】
氏名:安斎 富太郎(あんざい とみたろう)
旧職:代表取締役社長
以上

【SAPジャパンについて】
SAPジャパンは、エンタープライズ・アプリケーション・ソフトウェアにおけるマーケットリーダーとしてあらゆる業種におけるあらゆる規模の企業を支援しているSAP SEの日本法人として、1992年に設立されました。SAPは、企業が市場での優位性を保持するため、バックオフィスから役員会議室、倉庫から店頭、さらにデスクトップ環境からモバイル環境において、企業がより効率的に協業を行い、より的確なビジネス判断を行うための様々なソリューションを提供します。企業が継続的な収益性の高い事業を実現することに貢献するSAPのアプリケーションやサービスは、世界各国261,000社以上の顧客企業に利用されています。国内でも日本企業の情報化の推進、国際競争力および企業価値の向上に貢献しています。(www.sap.com/japan)

Session A5 : Faurecia : How to Run Leaner and Faster at Faurecia by Using a Real-Time Inventory Management Accelerator for SAP HANA

左記にも書いた通り、このフォーラムは4並列のブレークアウトセッションになっていて、全部は見られない。私たちは同僚と手分けしてセッションコンテンツを拾っているのだ。
自分が見た中で、出色だったのは、このパーツサプライヤ Faurecia社の HANAによるAcceleration実装。Suite on HANAの前にリリースされたSAP HANAの使い方、既存ERPにHANAを横付け、いわゆる side-by-side 構成にすることによって、既存のABAPコードや設定を変更することなく、トランザクションやレポートを加速化、更にZ付アドオンはHANAにアプリケーションコードを最適化させることで30倍のスピードを達成した、というもの。
この成果発表に価値があるのは、単なるPoCテストではない、というところ。自社がよく使っているトランザクションやレポートを加速させることで、在庫精度を99%にし、車両改造や個性的なインテリアで用いられるサービスパーツの在庫廃棄リスクを低減させる、という明確なビジネス目標があって、この投資をしたのだ。例示されたのはTr-code:MB51(入出庫伝票一覧)とTr-code:FAGLL03(総勘定元帳明細)。前者は一か月に4500ユーザ以上が利用し、120回もレポート作成される。同じく後者は1000ユーザ以上が使い、一か月の総待ち時間が6時間という代物。
HANAによるトランザクションとレポートの加速化実績は、MB51がDBアクセスタイムが1/4になり、トータルレスポンスタイムは1/2。また、ユーザの利用度は20%増加したという。ABAPをHANA最適化していない状態だと、演算速度そのものには効果なし、ということだ。
Faurecia社は、Z付FCS*1ABAPコードをHANAに最適化してそれも実測してみた。ABAPを最適化する前に、HANAをside-by-sideすることで、データアクセススピードは格段に向上。加えて、ABAPコードを最適化することで、トータル30倍のスピードを達成したという。

他にも、JITバッファを加速化させようとして上手くいかなかった例などを赤裸々に話してくれた。
セッションが終わった後に講演者のところへ行ってみた。そしたら、集まった人々の半数以上がSAPの同僚たち。それも判る気がする。これは実測に基づくレポートだから。
自分は「なぜ、HANAという新しいテクノロジーに飛びつくことができるのか。どうしたらEarly Adopterになれるのか。FaureciaはSAPを最優先するというポリシーがあるのか」と聞いてみた。
「新しいテクノロジーに飛びつく、というよりも、ビジネスで解決したい問題点があって、それに効果がありそうなソリューションだから採用したのだ」というしかりごもっともな回答。SAPを最優先するというポリシーに対しては、その質問が不思議そうな顔をして「ま、そうだ」くらいの反応。あまり、その点について意識したことはなさそうだった。
その割には Suite on HANA が出る前から side-by-side を実利用したりして、非常にありがたいお客様ではある。

*1:もともとCustom Developmentで開発したコードをSAPが商品化したもの。もちろん、もともとの開発発注企業は外販することを承知されている。

Third Keynote Speech - NISSAN : Doing Business in Asia - IT Driving Growth and Innovation

日産行徳CIO

このセッションも、資料の共有は無し。とても残念!
というのも、講演者の行徳CIOが説明されたスライドのうち、3枚、わずか3枚だけど、自分が作成したページが含まれていたからだ。
一昨年10月頃から、昨年10月まで、ちょうど一年間、自分はこの仕事に没頭していたといっても過言ではない。その成果を集約して3枚、と見るか、300頁を超える報告資料の中のたった3枚(それもプレゼン時間にしたら数秒)と見るか。私は、自分等の提言がこうやって対外発表資料の中に含まれているだけで、望外の幸せを感じる。少なくとも、大日産に対して物申し、それが内部で参照されている、ということであるから。
さて、行徳CIOの講演は....終了時に司会者から「いやぁ、速かった。スピード感あふれるスピーチ、ありがとうございました」と言われていた通り超特急。時間ピッタリ。ということは、話は深く、濃い、ということだ。
ZFやVWと同じく、業務戦略とIT戦略をどうマッチさせるのか、が話の眼目。
日産の中期ビジネス戦略は、Power 88 (P88)だということをご存知の方も多いのではないか。詳細についてはこちらをご参照下さい。端的に言うと、2016年度末までに、世界シェア8%を獲得することと、(税引き前)売上高利益率を恒常的に8%まで高めたい、というのが目標。なぜ "8" なのか、については、日本では「八」は末広がり、ラッキーチャンスでしょ?と人を食ったようなご説明。今現在、このP88に対してはまだ道半ば。2013年度末の結果は、マーケットシェア6.2%、利益率5.3%と、目標値にはまだかなりの乖離がある。しかし予定までには何とか目標を達成したい、との決意は変わらず。
日産の営業ボリュームは、米国と中国が他地域を抑えて突出。日本がそれに続くものの、USの6割ほど。全世界万遍なく(アフリカを除く)マーケットを拡大しているところは素晴らしい。
P88は、6つの戦略から成り立っている。それを受けて策定されたIT中期計画の名前が、VITESSEだ。フランス語で「スピード」を意味するというこの単語通り、スピーチの速度が速いのでメモを取るのが大変... P88と同じく、VITESSEも計画の道途中。毎年、ITの関係ベンダーを集めて進捗報告会がある。このキーノートでは、2011年から2013年の成果について報告あり。15億円の新規投資に対してリターンが56億円という数字。その間56プロジェクトがカットオーバー。*1
イノベーションへの取り組みは、2011-13の3年間と今年からの3年間で少しずつ変化。いずれもP88のイニシアチブをうけてITはこういう方針でいく、というもの。開発拠点、製造拠点、販売エリアがいずれも世界中に拡大している今、ヒト・モノ・カネを如何に可視化し有効活用していくべきか、そして日産としての独自性や強みをどう発揮していくか、戦略が明確に示されている。
この後、現在のSAP利用状況から将来に向かっての見通しが「Value Engineeringの活動に成果」として開示され、それが今のSAPとのエンゲージメント "SAP One Service (Seamless End-to-End One Service)"に繋がっている、と紹介された。SAP One Serviceは今年からSAP全世界で試行が始まった「コンサルティングとサポートが一つのサービスとして有機的に働く」顧客支援サービス。これまで、SAP内部のコンサルとサポートに壁があったのか!と言われると、そうだ、と言わざるを得ない状況にしばしば遭遇したが、弊社内部のしがらみを「シンプル」にすることで、お客様への価値を高めていこうという取り組みである。
この後、Emerging Marketへの Business Expansion *2の結果として、VOM(Vehicle Order Management)システムが現場でどのように受容されているか、ユーザコメントによるビデオが流れた。ブラジルのディーラーだ。皆楽しそう。引合いと制約が多ければ、自ずとにこやかになるよ、ね。
最後にCEO カルロス・ゴーン氏からITに対する期待 Speed, Satisfaction, Simplification が示され、行徳CIOのセッションは〆となった。
そのあと、SAPのGuenter Lasserが登壇し、Big Dataの活用に関する共同研究成果についてデモシステムなどを紹介しつつ、日産とSAPの「良い関係」をアピールした。

*1:なんとなく、会社規模と比較して投資総額が少ない気がするのだが、IT予算のうち新規に振り当てられる比率が低いのだろうか。

*2:受容爆発地域への事業拡大、と書くより、日産様の場合、こういう表現のほうが似合いだと思う。

BMW i3が展示されていた

会場1Fには、数台の車が展示されていた。さすが、日産GT-Rはカッコいい。
その隣には、BMW i3が。

同僚のKaufmann氏が、興奮気味。「知ってるか、これ?カーボンファイバーを使ったフレームで、軽量化されているのに剛性があるBMWとして初めてのバッテリー駆動車。こういうのが本当のイノベーションなんだよ」

このカーボンファイバー強化樹脂製のパッセンジャーセル(乗員を保護するための強固なボディ構造)を採用したことにより、鉄と同等の強度を持ちながら50%の軽量化を実現。車両重量はわずか1,220kgに抑えられているという。要注目だ。

Second Keynote Speech - Standardization in the Logistic Processes and Systems of the Volkswagen Group

このセッションはスライドが共有されないので、メモと記憶をたどって要点だけ記す。講演者は Thorsten Sommer – Head of Group Information Processes Logisticsと Dirk Saggau – Head of IT International Logistics & SAP Standard の二人。
この仕事に就く前はクルマに全く興味がなかったので、フォルクスワーゲン(VW)というのは「かぶとむし」のイメージしかなかった(古い〜。関係者に馬鹿にされてもおかしくない。)のだが、この本を読んでVWという企業の戦略性と野望に驚愕した。

トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者をめざす最強企業

トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者をめざす最強企業

VWはピエヒ家とポルシェ家が支配する同族会社で、幅広いブランドを系列化し、多数の車種を販売している。
luxury : ベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ
Premium : ポルシェ、アウディ
Economy : フォルクスワーゲン乗用車部門
Small : シュコダ、セアト
商用車 : フォルクスワーゲン商用車部門、スカニア、マン
Motorcycle : ドゥカティ

今回のキーノートでも、これまでの堅実な成長 = 車両台数拡販実績の誇らしげな説明と、今後のビジネス戦略 "Strategy 2018" の説明があった。
「2013年は大成功。良い年だった」という振り返りから始まり、中国市場重視 = 成長重視という大方針を掲げつつ、Strategy 2018を「グローバルでNo.1になるための戦略」と明言。そのためには何をしなければならないか、ということで4つのゴールが示された。

  1. 顧客満足度と品質でトップになること
  2. グループ全体で、税引き前利益率を8%を上回ること
  3. 年間1000万台の販売を達成すること
  4. 人材集めの競争でもトップになること

ともかく、がむしゃらにトップを狙い、かつその成長を維持していくという積極的なもの。最近のトヨタが方向転換をしているにも関わらず、だ。「中の人」は大変なんじゃないか、と知らないままに同情してしまう。
さて、キーノートプレゼンでは、このゴールに向かって、ITは何ができるのか、何をしなければならないのか、が示された。講演者によると、全世界で約310の異なる車両モデルが市販されており、ロジスティクス全体が非常に複雑であると言わざるを得ない。コスト面と利益率を考えたら、「複雑である、というのは悪」だと思わなければいけない。これを「ネットワーク」と「標準化」によってきちんと管理している、というのがこのキーノートの要旨だった。
ここでいう「ネットワーク」は4つに分類される。

  1. 製造ネットワーク
    • 顧客需要を明確にし、製造工場の能力、サプライヤの供給能力と併せて正しく管理することが大切。
  2. プロセスネットワーク
    • VWは多数のブランド・車種を持ち、製造・販売地域も全世界に及んでいる。このブランドと地域を「またいで」標準化を推進するためにいくつかの「委員会」を設けている。
  3. 従業員ネットワーク
    • 当然、生産を含むロジスティクスに関与する専門家は、全世界に散らばり、ブランドを超えて活躍していることになる。彼らの間をどのようにつないで情報交換させることができるか。
  4. ITネットワーク
    • で、肝心のITは上記3点をどうサポートしていくのか、が我々の興味の対象。プロセス標準化とシステム標準化にSAPが使われている。VW社内では、それを総称して UNIT というプログラム名で呼んでいる。

UNITは、各工場における部品のロジスティクスプロセスを司るもの。計画〜所要量計算〜入庫〜ラインへの払い出し。それが部品の流れだけでなく、カネの流れ、ヒトのリソース、などにも密接に関連している。SAPらしい、というか、このためにSAPを使うのというのは正解だと思う。
このUNITは2007年から始まり、各ブランドの製造拠点で使われていた旧システムを順次リプレースし、今年2014年にはグループ内全工場で標準使用され、Strategy 2018 の4つのゴールを狙うための推進役となる、という誠にキレイに締めくくられた。
「SAPをどう使うか」という観点においてVWの方針は明確で、「製造という競争力のコアはVW Group ITが業務要件に従って内製」する一方、プラントメンテナンス、部品ロジスティクス、人事や会計といった「各工場のその他要件は、SAPやIBMからのよい提案を採択」することで、標準化度合いを高め、スケーラビリティに対処する、というもの。
やはり年間1000万台の生産と販売を行うためには、この「標準化」による「スケーラビリティ」が、モジュール化戦略とオープン調達戦略を採るVWにとっては不可欠なのだと改めて感じた次第。SAPの適用範囲は一見狭いように見えるが、そこには確固たる意志と、VWにとって正しい使い方があるのだ。

Opening Keynote Speech - ZF : Motion and Mobility – ZF Innovation Today and Tomorrow

初日キーノート。Dr. Konstantin SauerはZFのボードメンバーで、財務・IT・M&A・地域としては北米を管掌。

話が始まってすぐ、担当しているお客様を連れてこられなかったことを激しく後悔した。ビジネス戦略からIT戦略につなげる部分を講演。
少し前に読んだこの本に

ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国

ソフトを他人に作らせる日本、自分で作る米国

「金を払って人に会う米国人、タダでも会わない日本人」という強烈な項目があるが、やっぱり直接話を聞けるというのは価値が高いと思う。私のブログを見てくださるのも有難いが、やはりそこは古澤というバイアスが強くかかっているので、会場で経験するのとは全く密度も内容も違うはず。個人の興味はそれぞれ全く別のところにあるのだから「金を払ってでも」自分で参加することと、参加者の話を聞くのとは別の経験と呼ぶべきだろう。ほんと「百聞は一見にしかず」とは、よく言ったものだ。
それはともかく、内容。

ZF社はいわゆる自動車の大手サプライヤーの一社で、2000年ころからM&A戦略によって SACHS CHERRY Hansen などを買収。事業拡大も相まってサプライヤの規模ランキングで2000年19位から現在第9位までのし上がってきた。車両メーカーに供給しているものは、パワートレイン、電子制御系、シャーシ

  • ビジネス戦略はどのようにして立てるか。経営者には当たり前かもしれないが、その戦略を受けてIT戦略を考える、いわゆる「下流」担当としては、上流のものの考え方に興味津々なのだ。
  • 話されたことは正攻法で、グローバルメガトレンドから、それを自分たちの関係領域に集約したメガトレンドを読み、さらに地域性(US, 中国, 日本, ブラジル, インドなど。どこもそれぞれの要件があるのだ)を加味して取り組むべきイニシアチブ(新たな取り組み)を選定。効率性(投資額と得られるであろうリターン)で評価して優先順位付けをする、というものだ。
  • グローバルメガトレンドは次の4視点
  1. 社会性と環境
  2. 政治、法律、経済
  3. マーケットの推移・変遷と顧客動向
  4. 新技術と製品・商品性

例えば、マーケットの推移・変遷では、このようなグラフが示された。あの2009年を境に、全く世界の様相が変わってしまったのだ。北米、欧州が現状維持の中、ひとつ中国だけがとんでもない右肩上がり。これはそれら地域で生産された/生産されるであろう車両の台数を示している。

またどうしても目につくのが、他の地域が漸増しているのにもかかわらず、ただ一国、2020年に向けて生産台数が少なくなっていくのがわが日本。SAP社内の勉強会でも、こういうメガトレンドについての話があった。その時は2014年から2020年を見たとき、日本だけが-19%成長、あとの国・地域はプラスと聞いて、何か統計が間違っているのではないかと感じていたのが、改めて打ちのめされた感じだ。
それはともかく、こういったメガトレンドから、自社の経営戦略を立てているんだなぁという背景が改めて確認できた。そして、こういう内容を講演してくださることに改めて感謝。これだけでも参加した価値があったと感じた。
で、それらメガトレンドから、ZFとしてどう立ち向かうのか。"ZF2025"という長期戦略は5本柱。

  • バランスをとってマーケット浸透を図る
  • 収益性をもとめて多角化
  • 財務は独立性を保つ (特定の車両メーカーに依存しない)
  • 世界から優秀な人々に集まってもらえる会社にする
  • そのためにも、あるいは、上記によって、イノベーションを起こし、コストリーダーシップを確立し、ZFとしてのユニークな市場ポジションを確保するのだ。

Dr. Sauerは、こういった内容を、力強く...ではなく、淡々と話していく。実に当たり前のように。

では、「イノベーションをお越し、コストリーダーシップを確立する」にはどうしたらいいのか。
Dr. Sauerは"Price Transparency"と言った。それにより競争力を生み出す。と。また、イノベーションは "Products と Serviceの組合せから生まれる" とも。
商品でいえば、非常に効率の良いAT(Automatic Transmission)やCVT(無段変速機), 電装/電子制御系, 今大流行(?)のコネクティビティ (「つながる」クルマ)。車両メーカーがプラットフォーム戦略を採るがゆえに、車の差別化要因はこういった部品系が担っている、という自負と自信が垣間見られた。
そして今は、ITが商品としてのクルマ、サービスとしてのクルマのいたるところに使われている。センサーから出る情報、それらがタブレットなどで自由に確認できる。それを可能にしているのが、標準インタフェースを採用した "Openmatics Platform" 。
更にその外側に、顧客サービス(メーカーとしてのサービス、金融、運行管理など)、Googleなどの外部サービスなどがあり、それらが一つになって「顧客にとってのクルマ」が位置づけられる、と表現された。
これは、豊田章男社長が「車は、走る・曲がる・止まる・つながる」と表現されていることと同義なのだと思う。それをもう少しかみ砕いて解説してくれた感じを受けた。
非常に印象に残ったキーノートだった。

Dr. Sauerの後を受けて、IT責任者のPeter Kraus氏がIT戦略について講演 "Service Center IT"という表題。
ZFのITランドスケープ。Navisionなどは買収会社にあったものをそのまま流用。

ポータル、BI、EAI、プラットフォームサービスなど基盤系は、SAP NetWeaverを使っている、と表示されたのが、2003年SAPがNetWeaverを世に送り出した頃の4層の絵。

このアーキテクチャに将来がある!と、あの頃、熱を上げていたことを思い出すとともに、この考え方を堅持し、そのまま10年後の現在も継続して活用してくれているのだというところに胸熱。
そして今後。ビジネスの長期プラン(ZF2025)を受けて、IT側では "2025 Materials Management" を策定。サプライチェーンパフォーマンスを透明にするために次の3点を柱とした。

  • サプライヤとのやり取りを100%電子化すること。そのために単一の共通プラットフォームをすべてのサプライヤに提供する。
  • プロセスの自動化とレポーティングの自動化のために、標準化と最適化を図る
  • システムがサポートするグローバルサプライヤ管理を確立し、サプライヤの「ライフサイクル管理」を行う

ZF2025の「バランスをとってマーケット浸透を図る」という方針に呼応しているように思う。標準化したパーツを、世界でもっとも最適化された場所で信頼のおけるサプライヤから調達する、というビジネス戦略を支えるのが "2025 Materials Management" なのだ。
透明化されたサプライチェーンの様子は、ダッシュボードで見える化する。
過去、カスタマ、サプライヤ、ディーラーなど分散管理されていた(歴史的背景で分散管理せざるをえなかった)マスタ類は一元化を図り、分散配置されているERPのクロスファンクションとして、BW, MDM, SRM, APOなどを共通化。ガバナンス委員会もそういう方針で一新したという。このあたり、数年前からの取り組みとは言うが、なんだかSAPの「教科書」を見ているようで、本当にこんなに綺麗なの?と、正直思ったが、まぁそこはキーノートだ。
逆に、HR人事系システムの考え方は、2014年の取り組みでも、Global HR CoreからHR IT Brazilが分かれていて面白いと思った。逆に、人事レポート系は Global HR Reportingに一元化されていて、 ZF2025の 「世界から優秀な人々に集まってもらえる会社にする」 を具現化するITとして注目すべきだ。

実りの多いZFキーノートであった。

そうそう、フォーラム概要を書いておかなくては

SAP Automotive Forumは今年で14回目を迎えるそう。以前はドイツ語セッションだったものが、昨年から独英同通が入るようになって、ドイツ語が解らなくてもなんとかなるようになった。今年のプレゼンターは8割方、英語でやってくれるので助かった*1。参加費は定価€700。グループ割引は10%。いずれもVAT別。これはお客様はもちろん、SAPジャパンからの参加者にもチャージされている。でも、下記、ZFの項でも書いた通り、それに見合うだけの情報価値はあると思う。
今年のカスタマースポンサーはパーツサプライヤのZF。デラックス(!!)パートナースポンサーはMHP (A Porsche Company)abat
初日の公式発表では、参加者650名。CCLは箱としてはそれほど大きくないので、すぐお目当ての人を見つけることができることができて便利。かつ濃密な時間が流れる。

初日

SAP組立型製造業ソリューション責任者のNils HerzbergとSAP Germany*2の組立型&自動車産業営業トップの Dr. Daniel HolzによるWelcome Message の後、キーノートは、ZF。その後、ABCDEの5トラックに分かれてブレークアウトセッションが続く。
夕方、再び大会場にて、2つ目のキーノート。フォルクスワーゲン(VW)のロジスティクスプロセス標準化について。
初日の〆は、Professor Dr. Jan Mayer(スポーツ科学および心理学)による講義*3
夜は別会場に移って、FIFA World Cup の観戦。ドイツ戦だったら残っていたと思うが、参加せず。

2日目

4つ目のキーノート。日産CIOの行徳セルソ氏による "Doing Busines in Asia - IT Driving Growth and Innovation"。
続いて5つめはSAPから。"The Next-Generation SAP Business Suite"
前日と同じように、5トラックのブレークアウトセッション。
最後にSAPからのキーノート。 "Big Data in the Automotive Industry - Enabling Business Innovation with SAP HANA" なんとこれもドイツ語、うわぁ。意を決して同通なしで聞いてみたが、面白くないのは変わりなし。普段から聞き、お客様に話している内容だから、それも当然か。
で、16時でお開き。それぞれ、来年再開の約束をして世界各国に散っていくのであった。

*1:実のところ、ドイツ語のプレゼンを英語同通で聞くのはとてもつらい。ドイツ語>英語で情報量と質が落ち、さらにそれを日本語頭で理解しようとするのでチンプンカンプンのところも多数。

*2:SAP AGとは別。ドイツ国内向け販社

*3:これがドイツ語セッションで、同通に耐えられず、早々に退散してしまったのは内緒だ