EAIとERP

SAPが力を入れているのは、「アプリケーション統合基盤」のSAP NetWeaverであって、EAIはその中の一機能分野にすぎません。SAP XI3.0にしても、(もちろん、単独のEAI/BPMツールとして活用することもできますが)他のNetWeaverコンポーネントERP/SCM/SRMといったアプリケーションコンポーネントと協調して動くことで、より大きな効果を生み出すことができます。

いかん。SAP社員という顔が先に立って、建前論になるところだった。

今から振り返ると、クラシックなIT部門のミッションは、

  • 「ヒト」「モノ」「カネ」の情報を一元管理して
  • 仕事のプロセスを共通化
  • 経営者から従業員・パートタイマーまで同じITの上で仕事をする

ことにあったのではないかと思います。
そのためにSAP R/3では次のような「クラシックな」IT基盤を提供してきたと思います。

  • マスタデータは正規化してひとつのデータベースに収める
  • トランザクションデータは「伝票」に構造化して入力し、裏で会計仕訳をする
  • 仕事のプロセスをモデル化し、「伝票」フローで規定する

R/3では、このような導入のしかたが基本となっていました。

しかし、ここ10年で、前提としていたビジネス環境は変わりました。その結果、SAPが取り組む仕事モデルが広がったと解釈してもいいでしょう。
私は、現時点でのIT部門のミッションはこんなものかなと、思っています。

  • 「ヒト」「モノ」「カネ」に加えて「非定型のナレッジ」を仕事環境のベースとする
  • ステークホルダーからの要求にバランスをとりながら仕事のプロセスを規定・変更する
  • 社内外のユーザに有益なITを提供する

従って、SAPが企業のIT部門に提供すべきIT基盤も自ずと変質していると考えます。

  • 定型化・正規化データのみならず、非定型なナレッジも取り込む
  • 社内外のITリソースとの連携をとりつつ、全体として仕事に有用なIT基盤としてまとめ上げてユーザに提供する仕組みを整える
  • 仕事のプロセスも、定型プロセスとアドホックなプロセス(その場で変更可能なプロセス)の両方を対象とする

こんなところでしょうか。

もうひとつ、ここ10年で、インターネットの標準プロトコルがビジネス上の標準プロトコルとして十分浸透したというIT環境の変化があります。「信頼性の高いLAN」を前提として独自に作り上げたSAPのプロトコルは、信頼性・効率性にすぐれるものの、「信頼性の低いインターネット」を前提としたオープン仕様(http/smtp/ftp; html/xml/java/javascript; SOAP; Webサービス etc.)に慣れた目からはそのメリットを正当に評価してもらいにくい環境になったと思います。
そこで、SAPも、これらオープン仕様にも対応しています、Webブラウザでも使えます、xmlSOAPWebサービスでアプリケーションを使うことができます、という変化(というより、進化、かな?)を遂げなければならなかったのだと思います。

転んでもタダ起きるのはいやですから、転んだときにあたりを冷静に見回して拾った「フラッシュビーム(若いヒトにわかるかな。ウルトラマンに変身するためのツールです)」でパワーアップを図った、そんなところではないかと。
なんだか論旨の収拾がつかなくなってきましたが、貪欲なSAPが、過去にはERPのアンチテーゼと見なされたEAIをも、もろとも止揚してESA/NetWeaverとして体系化し、その上に新たなERPという概念を再構築しようとしている。それが今現在のSAPの位置づけなんじゃないかな、と思っています。