Enterprise Architecture

ASUG

社内の有識者の間で、EA/SOA/ESAの三題噺を詰めているところだ。しかし、なかなかすっきりとした説明の流れが作れないで苦しんでいる。
と思っていたら、CIOオンラインに示唆に富んだ記事ゼネラルモーターズ(GM) 全社共通のIT基盤を整備し、理想のシステム環境の構築に挑む〜GMのCTOが明かすEA実践術〜が載った。
ちょっと抜粋させていただく。

──GMでは、EAを導入することで、どのようにシステム環境の複雑さを排除しているのですか。具体的な例で教えてください。
 2003年の夏のことです。我々は、欧州、アジア太平洋、中南米、中東のそれぞれの拠点において複数のSAPシステムを運用していたことに気がつきました。同じベンダーのパッケージでありながら、ベースとしているテンプレートの仕様が地域ごとに異なっており、バージョンもまちまちだったのです。そのままでは、機動力のある共通のシステム環境などとても望めません。そこで、我々は、各拠点のシステムのバージョン統一を含め、さまざまな機能を共通化するプロジェクトを立ち上げたのです。

──EAのコンセプトを大々的に導入するにあたって、社内からの抵抗はありませんでしたか。
 実は、とりわけ上級幹部の間から批判の声が多く上がりました。彼らにとって、EAは当初「海の水を沸騰させるようなもの」と映ったようです。すなわち、多くのスタッフを研修に派遣し、机上のプランニングを延々と行い、膨大な書類を作成しないかぎり、なかなか効果が表れないだろう――というわけです。

 しかし、我々が目指したのは、決してそのような大仰なものではなかったのです。すべてのビジネス領域をくまなく網羅したり、あらゆるプロセス・レベルの詳細情報をマッピングしたりしようなどとは、はなから考えていませんでした。私は、あくまでもGMに最も高い価値をもたらすと判断した領域のみに、EAを適用すべきだとの立場に立っていました。それにより、最小限の労力で最大の成果を上げられると主張したのです。

──では、現在、GMの経営陣はEAのコンセプトを支持しているのですね。
 はい。ですが、彼らはおそらく今我々が行っている取り組みを「EAである」とは認識していないはずです。「世界共通のビジネス・プロセスとシステムを、GM全体に整備していくための取り組み」とでも思っているのではないでしょうか。なぜなら、我々は社内において、EAの看板を掲げながらアピールするといったことを一切行っていないからです(笑)。

──それは、なぜですか。
 当社の経営陣が今、はやりのITキーワードにうんざりしている状況にあるからです。ここ数年、市場には次々と新しい技術が登場し、それらが「企業の課題を解決する」ともてはやされてはブームになってきました。
 しかし、そうしたマーケット・メッセージが、必ずしも正しいわけではなかったことを、経営陣は経験的に知っているのです。
 そんな中で、(今流行している)EAという言葉を我々が使えば、企業にとってきわめて重要であり、ビジネスの枠組みを定めるという役割を担うはずのEAが、ERP(Enterprise Resource Planning)やWebサービス、ワイヤレスといった“はやり言葉”と同等に見なされてしまうおそれがあります。

「ちょっと」といいながら引用がかなり長くなってしまって恐縮だが、示唆に富む指摘が数多くなされているためにこうなった。
社内で三題噺を詰めるにあたって、当然ドイツ本社やUSの資料を漁るわけだが、案に相違してピタリとはまる説明資料が見当たらないのだ。これは意外でもあり、ある意味新鮮でもあった。単純に考えれば「お客様がEAの活動を始めてしまったら、しばらくは『ライセンス購入』の動きが止まるから、あえてSAPからそんな説明はしない」というロジックになるのだが、そこまで短絡的に考えるべきではないだろう。
現に今月頭にカリフォルニアはアナハイムで行われたASUG(Americas' SAP Users' Group)のカンファレンスでもEAはユーザ企業としての主要なテーマとして位置づけられていたらしい*1。すなわち、ユーザ企業は*2EAという視点でBAからTAまでをトータルに考え、その中でSAPのようなプロダクトをツールとして無駄なく使っていくことで、ビジネス課題に沿ったITをより低コストで実現するという方向性なのだろう。
このように考えると、SAPの営業やコンサルタントは、EA/SOA/ESA/ERP*3の関係について顧客とディスカッションできるように自分の頭の中で論理を組み立てておかなければならないが、あえてこちらから「それについてお客様に説明申し上げる」のは本末転倒なのかもしれない。
と思ったしだい。この項は、この後も継続して考察していく必要があるような気がする。

*1:「らしい」というのは、自分は出席したわけではなく、ASUGのページを漁っての印象

*2:はやり言葉としてではなく

*3:いつの間にか四題に(笑)