Board Member, Shai Agassi

オープニング

オープニングはロバート・ゼメキス監督 映画Back To The Future で、デロリアンに乗り込んだマーティが"(back to) about 30 years"とかっこつけて言うフィルムのトレーラーが流れた。
ん?"バック・トゥ・ザ・フューチャー" ?

SAP期待の星 Shai Agassi

TechEdには珍しくネクタイ姿のShai Agassi登場。

手に持っているTシャツは、今日20時に"SDN CLUBHOUSE"に集まってくれた人に配るという。SDNはSAP Developer Networkの略で、去年のTechEd 2003で発表された、SAPの開発者・パートナーの開発者・ユーザ・その他SAPの技術オタクが集まって双方向の意見交換をする「開発者向けネットワーク」なのだ。コンテンツはすべて英語。去年の発表にあたっては「ドイツ語だって用意していないんだ。共通語は英語」と言っていた。
肝心のTシャツは、左胸に[SAP TECHED]。これはよい!ところが背中に大きくUeBERGEEK*1とあり、下にもなにやら文字が書いてある。ちょっと外では着られないか?

Shaiのキーノートセッション

Shaiのキーノートは、ここ1年でのSAP NetWeaverの拡大について、その実績を数字として示すところから始まった。

5万人のユーザ
2150パートナ
1,000社のリファレンスカスタマ。

  • NetWeaverのコンポーネントを2つ以上使っているところだからね、と名前だけでないことを強調

100,000のSDNメンバー登録
そして、150社のxAppカスタマ

確かに、ここ1年でSAP NetWeaverの名前はSAP世界には浸透し、当たり前になった。

改めて、ShaiからSAP NetWeaverを理解する5つのキー項目が提示された。

Flexibility is key for growth and survival
Web services provide flexibility, but are not enough
A business process platform emerges and provides Enterprise Services
A huge eco-system develops around it
Few companies can provide these complete solutions

確かに、「改革なくして成長なし」と誰かも言っていた。それと同じフレーズから始めて、

ITにフレキシビリティを持たせるには"Web Service"が必要だが、それだけではダメだ、

として、SAPが提唱しているESAとの違いと優位性を説明する。

ビジネスプロセスを管理するための統一的なプラットフォームが必要であり、それが「グラニュラリティ(サービスの粒度)」を大きくしたEnterprise Servicesを作り出すのだ。
同じようなことを他社でも提唱しているが、先に言及したとおり、SAPの独善でやっているわけではなく巨大な「エコ・システム(顧客・パートナー・SAPの共存共栄世界)」がそこに生まれている。システム基盤の大きな提携をwebSphereと10日前に行って、その後すぐCEOが辞めさせられてしまったどこかとは異なる。
こういった統一的なソリューションを提供できる企業は世界を見渡しても余りないのだ。

というのが、ここでの説明である。「SAPの存在意義」だ。

そして、SAPのチャレンジとして "time to change management"があると再確認。

さて、冒頭の"Back to the future"だが、それはSAPとESAおよびSAP NetWeaverの役目として、ユーザ企業に何をもたらすのかをレポートしなければ、理解してもらえない。

例として、航空会社の自動チェックイン端末(チェックインKIOSK)を取り上げると、99年にある航空会社がその仕組みを「発明(INVENT)」し、2002年にはそれを世界中にロールアウトすることでコアコンピタンスを向上させた(INNOVATION)。確かにその時点ではチェックインKIOSKは他航空会社との差別化要因になったが、すぐ他社も追随した(CONTEXT化)ので標準的な機能になってしまった(STANDARDIZATION)。チェックインKIOSKの場合、その後どういう道をたどるのかわからないけれども、それがコモディティ化(COMMODITIZATION)して後進に道を譲り退場するというのが普通である。

SAPはこれまでCOREをCONTEXT化する、あるいは先進のITをパッケージ化(CONSOLIDATE)することで他社もそのビジネスプロセスを導入することができるようにしてきた。
また、当たり前になった機能や機構をアウトソース(OUT-TASK)するのも活動の範囲である。
今、SAPは次の道を探っている。当たり前になった機能を再活用することで、新しい価値を見出し、これまでの情報投資に新しい命を吹き込むことができないか、ということだ。それがIN-SOURCEであり、COMPOSEなのだ。
IN-SOURCEの例としては、コラボレーションが挙げられる。一旦アウトソースした相手と情報をリアルタイムに交換することにより、そのプロセスをインハウスで動かすのと同じようにコントロールできるようにするのだ。そのためにはパートナー企業とのコラボレーションが必須である。
COMPOSEは、既存の情報システム(アプリケーション)を使いながら、さらにその上に「複合アプリケーション(COMPOSITE APPLICATIONS)」を作ることにより、これまでの情報投資を生かした柔軟性の高い(FLEXIBLE)システムを作り出し、それを企業のCOREとできるような情報基盤と開発機構を提供することを指す。SAPの提唱するESAと、それを実現するSAP NetWeaverの活躍の場である。
その後、再び、その複合アプリケーションをCONSOLIDATEしてSTANDAIZATIONへの道をたどることになる。それが複合アプリケーションのパッケージ化商品のxAppsなのだ。
このように、既存システムに再び活躍の場を与えることこそが、今回のTechEdのテーマBack to The Futureなのだ。

SAPは現時点から右の方向に向かう。すなわち、SAPの機能群のサービス化であり、SAP全体をESA化する方向である。SAPの顧客各位はSAPの技術を使いながら、自社の機能をサービス化することができる。SAPと顧客はそれぞれ独立に活動できる。だが、行き着く先はひとつになる。サービス化されたSAPとnon-SAPの既存システムを柔軟に組み合わせて、いろいろな複合アプリケーションを構築していくことのできる世界である。

その道しるべとして、5月にSAP会長のHenning Kagermannが提示した、


SAPによるESA化のロードマップ

が引用され、同じようにユーザ企業、パートナー企業それぞれも


ESA化のロードマップ

を作ると良いと助言。

そのためには、今回のTechEdで大いにESAとNetWeaverを勉強、体感して欲しいとまとめ、キーノート恒例のデモに移った。

Shaiのデモンストレーション

昨年はGUI MACHINEすなわち今年本格的にリリースされたSAP Visual Composerのデモで、観衆からヤンヤの喝采を浴びたのだが、果たして今年は?
今年は3本立てだった!

  • Java VMをユーザ個別に立てる話
  • OLTPからのデータをSAP BIに超高速でロードする話
  • MDMとA2iの連係の話

どれもこれも玄人向け。私のような「にわか」GEEKには敷居の高い内容だった。
しかし、こういうシステムアドミニストレーションの内容が出てくることが実は企業のIT基盤にSAP NetWeaverが使われている証左となるのだろう。
最後におまけのように、Shai自身による"SAP NetWeaver Rapid Installation"の実演が行われたが、スタートさせただけで「時間がないから」と次のPeter Zenckeにバトンタッチしてしまった。

*1:UeはUウムラウト。ドイツ語らしい