ビジネス・インテリジェンスという言葉。本当はとても重い概念なのでは。

ウルトラ・ダラー

ウルトラ・ダラー

NHK前ワシントン支局長の手嶋龍一氏の、経験と知識に裏打ちされた、限りなくノンフィクションに近いフィクション。いや、これは本当にフィクションなのか?と疑問に思うところも多々。
ストーリーも優れているし、深い観察眼に裏打ちされた、彼のインテリジェンスが至るところに見られる。とても面白いので、是非ご一読を。
ところで「インテリジェンス」とは何だろう。本書56ページで、実に秀逸な会話で、それが紹介されていて、胸を突かれる思いがした。

 極東の地に赴くことになった反抗児*1は、母校に恩師を訪ねた。師弟はテムズのほとりを並んで歩いた。(中略)
「先生、われわれはインテリジェンスという言葉を、情報や諜報という意味でいともたやすく使っていますが、ほんとうは何を意味するのでしょうか」
 教授は、最後の口頭試問に臨んだ学生に教え諭すように応じた。
「実に君らしい質問だ。(中略)」
 視線をテムズの流れに戻していった。
「大文字で始まるインテリジェンス、これは知の神を意味することは知っているね。神のごとき視座とでもいおうか。さかしらな人間の知恵を離れ、神のような高みにまで飛翔し、人間界を見下ろして事態の本質をとらまえる。これがインテリジェンス・サービス、そう、情報士官を志した者の目指すものだ。いいかね、スティーブン」

この教授の言葉の後、インテリジェンスの本質が語られる.....
じゃぁ、私がこれまで、NetWeaverの説明をするときに本当に気軽に使っていたBusiness Intelligence、そう、大文字で始まっているこの言葉の本当の意味は、どこまで重いものなのか!

雑多な情報のなかからインテリジェンスを選り分けて、国家の舵を握る者に提示してみせる-----これこそが情報士官の責務だ。

何と!Enterprise SOAの目的のひとつが、正にこの言葉に集約されている。
雑多な情報の中から、事象のみならず、その事象の背景や前後関係までも選り出して、Enterpriseとしてどうすべきかを的確に判断できる人に伝える。その機構がイベントドリブンで汎用的に機能するようモデリングし、構築することがEnterprise SOAの究極の目的であると、私は解している。
ITの力で代表取締役に神の視座を提供すること。BIがこのような重みをもったモノであることを、改めて認識したい。

*1:主人公のスティーブンは、オックスフォード卒業後、BBCの特派員となった。あくまでも表向きの職業だが。