Second Keynote Speech - Standardization in the Logistic Processes and Systems of the Volkswagen Group

このセッションはスライドが共有されないので、メモと記憶をたどって要点だけ記す。講演者は Thorsten Sommer – Head of Group Information Processes Logisticsと Dirk Saggau – Head of IT International Logistics & SAP Standard の二人。
この仕事に就く前はクルマに全く興味がなかったので、フォルクスワーゲン(VW)というのは「かぶとむし」のイメージしかなかった(古い〜。関係者に馬鹿にされてもおかしくない。)のだが、この本を読んでVWという企業の戦略性と野望に驚愕した。

トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者をめざす最強企業

トヨタ対VW(フォルクスワーゲン) 2020年の覇者をめざす最強企業

VWはピエヒ家とポルシェ家が支配する同族会社で、幅広いブランドを系列化し、多数の車種を販売している。
luxury : ベントレー、ブガッティ、ランボルギーニ
Premium : ポルシェ、アウディ
Economy : フォルクスワーゲン乗用車部門
Small : シュコダ、セアト
商用車 : フォルクスワーゲン商用車部門、スカニア、マン
Motorcycle : ドゥカティ

今回のキーノートでも、これまでの堅実な成長 = 車両台数拡販実績の誇らしげな説明と、今後のビジネス戦略 "Strategy 2018" の説明があった。
「2013年は大成功。良い年だった」という振り返りから始まり、中国市場重視 = 成長重視という大方針を掲げつつ、Strategy 2018を「グローバルでNo.1になるための戦略」と明言。そのためには何をしなければならないか、ということで4つのゴールが示された。

  1. 顧客満足度と品質でトップになること
  2. グループ全体で、税引き前利益率を8%を上回ること
  3. 年間1000万台の販売を達成すること
  4. 人材集めの競争でもトップになること

ともかく、がむしゃらにトップを狙い、かつその成長を維持していくという積極的なもの。最近のトヨタが方向転換をしているにも関わらず、だ。「中の人」は大変なんじゃないか、と知らないままに同情してしまう。
さて、キーノートプレゼンでは、このゴールに向かって、ITは何ができるのか、何をしなければならないのか、が示された。講演者によると、全世界で約310の異なる車両モデルが市販されており、ロジスティクス全体が非常に複雑であると言わざるを得ない。コスト面と利益率を考えたら、「複雑である、というのは悪」だと思わなければいけない。これを「ネットワーク」と「標準化」によってきちんと管理している、というのがこのキーノートの要旨だった。
ここでいう「ネットワーク」は4つに分類される。

  1. 製造ネットワーク
    • 顧客需要を明確にし、製造工場の能力、サプライヤの供給能力と併せて正しく管理することが大切。
  2. プロセスネットワーク
    • VWは多数のブランド・車種を持ち、製造・販売地域も全世界に及んでいる。このブランドと地域を「またいで」標準化を推進するためにいくつかの「委員会」を設けている。
  3. 従業員ネットワーク
    • 当然、生産を含むロジスティクスに関与する専門家は、全世界に散らばり、ブランドを超えて活躍していることになる。彼らの間をどのようにつないで情報交換させることができるか。
  4. ITネットワーク
    • で、肝心のITは上記3点をどうサポートしていくのか、が我々の興味の対象。プロセス標準化とシステム標準化にSAPが使われている。VW社内では、それを総称して UNIT というプログラム名で呼んでいる。

UNITは、各工場における部品のロジスティクスプロセスを司るもの。計画〜所要量計算〜入庫〜ラインへの払い出し。それが部品の流れだけでなく、カネの流れ、ヒトのリソース、などにも密接に関連している。SAPらしい、というか、このためにSAPを使うのというのは正解だと思う。
このUNITは2007年から始まり、各ブランドの製造拠点で使われていた旧システムを順次リプレースし、今年2014年にはグループ内全工場で標準使用され、Strategy 2018 の4つのゴールを狙うための推進役となる、という誠にキレイに締めくくられた。
「SAPをどう使うか」という観点においてVWの方針は明確で、「製造という競争力のコアはVW Group ITが業務要件に従って内製」する一方、プラントメンテナンス、部品ロジスティクス、人事や会計といった「各工場のその他要件は、SAPやIBMからのよい提案を採択」することで、標準化度合いを高め、スケーラビリティに対処する、というもの。
やはり年間1000万台の生産と販売を行うためには、この「標準化」による「スケーラビリティ」が、モジュール化戦略とオープン調達戦略を採るVWにとっては不可欠なのだと改めて感じた次第。SAPの適用範囲は一見狭いように見えるが、そこには確固たる意志と、VWにとって正しい使い方があるのだ。