Third Keynote Speech - NISSAN : Doing Business in Asia - IT Driving Growth and Innovation

日産行徳CIO

このセッションも、資料の共有は無し。とても残念!
というのも、講演者の行徳CIOが説明されたスライドのうち、3枚、わずか3枚だけど、自分が作成したページが含まれていたからだ。
一昨年10月頃から、昨年10月まで、ちょうど一年間、自分はこの仕事に没頭していたといっても過言ではない。その成果を集約して3枚、と見るか、300頁を超える報告資料の中のたった3枚(それもプレゼン時間にしたら数秒)と見るか。私は、自分等の提言がこうやって対外発表資料の中に含まれているだけで、望外の幸せを感じる。少なくとも、大日産に対して物申し、それが内部で参照されている、ということであるから。
さて、行徳CIOの講演は....終了時に司会者から「いやぁ、速かった。スピード感あふれるスピーチ、ありがとうございました」と言われていた通り超特急。時間ピッタリ。ということは、話は深く、濃い、ということだ。
ZFやVWと同じく、業務戦略とIT戦略をどうマッチさせるのか、が話の眼目。
日産の中期ビジネス戦略は、Power 88 (P88)だということをご存知の方も多いのではないか。詳細についてはこちらをご参照下さい。端的に言うと、2016年度末までに、世界シェア8%を獲得することと、(税引き前)売上高利益率を恒常的に8%まで高めたい、というのが目標。なぜ "8" なのか、については、日本では「八」は末広がり、ラッキーチャンスでしょ?と人を食ったようなご説明。今現在、このP88に対してはまだ道半ば。2013年度末の結果は、マーケットシェア6.2%、利益率5.3%と、目標値にはまだかなりの乖離がある。しかし予定までには何とか目標を達成したい、との決意は変わらず。
日産の営業ボリュームは、米国と中国が他地域を抑えて突出。日本がそれに続くものの、USの6割ほど。全世界万遍なく(アフリカを除く)マーケットを拡大しているところは素晴らしい。
P88は、6つの戦略から成り立っている。それを受けて策定されたIT中期計画の名前が、VITESSEだ。フランス語で「スピード」を意味するというこの単語通り、スピーチの速度が速いのでメモを取るのが大変... P88と同じく、VITESSEも計画の道途中。毎年、ITの関係ベンダーを集めて進捗報告会がある。このキーノートでは、2011年から2013年の成果について報告あり。15億円の新規投資に対してリターンが56億円という数字。その間56プロジェクトがカットオーバー。*1
イノベーションへの取り組みは、2011-13の3年間と今年からの3年間で少しずつ変化。いずれもP88のイニシアチブをうけてITはこういう方針でいく、というもの。開発拠点、製造拠点、販売エリアがいずれも世界中に拡大している今、ヒト・モノ・カネを如何に可視化し有効活用していくべきか、そして日産としての独自性や強みをどう発揮していくか、戦略が明確に示されている。
この後、現在のSAP利用状況から将来に向かっての見通しが「Value Engineeringの活動に成果」として開示され、それが今のSAPとのエンゲージメント "SAP One Service (Seamless End-to-End One Service)"に繋がっている、と紹介された。SAP One Serviceは今年からSAP全世界で試行が始まった「コンサルティングとサポートが一つのサービスとして有機的に働く」顧客支援サービス。これまで、SAP内部のコンサルとサポートに壁があったのか!と言われると、そうだ、と言わざるを得ない状況にしばしば遭遇したが、弊社内部のしがらみを「シンプル」にすることで、お客様への価値を高めていこうという取り組みである。
この後、Emerging Marketへの Business Expansion *2の結果として、VOM(Vehicle Order Management)システムが現場でどのように受容されているか、ユーザコメントによるビデオが流れた。ブラジルのディーラーだ。皆楽しそう。引合いと制約が多ければ、自ずとにこやかになるよ、ね。
最後にCEO カルロス・ゴーン氏からITに対する期待 Speed, Satisfaction, Simplification が示され、行徳CIOのセッションは〆となった。
そのあと、SAPのGuenter Lasserが登壇し、Big Dataの活用に関する共同研究成果についてデモシステムなどを紹介しつつ、日産とSAPの「良い関係」をアピールした。

*1:なんとなく、会社規模と比較して投資総額が少ない気がするのだが、IT予算のうち新規に振り当てられる比率が低いのだろうか。

*2:受容爆発地域への事業拡大、と書くより、日産様の場合、こういう表現のほうが似合いだと思う。