Pre-Conference終了

>TechEd参加者のJumpstartのために用意されている特別セッションなんだ。
朝9時から17時まで、みっちり中身の詰まったBoot Camp: SAP Enterprise Architecture Frameworkに出席してきた。。
確かにこれは「ブートキャンプ」。ビリー隊長ならぬフランク・ロペス隊長の下、Enterprise Architectを目指す新兵があふれていた。8人掛けの長いすが2列9本。それでも足りずに補助席が10余り必要となる大盛況。
新兵といっても、会場を埋めたのはITの世界における相当のベテランたち。多分、企業のCIOクラスも多数参加していたのではないか。
Enterprise Architectというのは、ITの範疇を超えた企業構造建築士*1なのだ。Enterprise Architectは、IT技術・ビジネス・アプリケーションなど、さまざまな知識に精通していなければならない。これまでの経験を基に「私たちの会社のカタチ・仕事の仕方」を、あらゆるステークホルダー*2と話をして現在(as-is)とあるべき姿(to-be)の合意を取り付け、誰にでもわかるように「視覚化」して社員に浸透させ、to-beを手に入れるべく企業の変革(Transformation/Transition)の進捗を管理する。それがEnterprise Architectの仕事である。
なんでも、仕事の95%は「ミーティング」であり、残りの5%が「視覚化」なのだそうだ。
効率よく「ミーティング」をこなし、さまざまな人々とコミュニケーションをとり、合意を取り付け、「視覚化」するには、方法論と強力なツールが揃っていて、それらを十分使いこなせるようになることが基礎だ。この基礎を習得するだけでも、20日のトレーニングが必要だという。このブートキャンプでは、たった一日でそのサワリ*3に触れてみようといった程度。
それだけに内容は盛り沢山で、濃い〜。正直、疲れた。
なお、最後までがんばった人へのプレゼントとしてもれなくこの本をもらえた。

Enterprise Architecture As Strategy: Creating a Foundation for Business Execution

Enterprise Architecture As Strategy: Creating a Foundation for Business Execution

また、アンケートに回答した約120名からその場で抽選があり、iPod Touch(それも16GB!)が1名様に当たった。うらやましい*4
さて、このEAFブートキャンプアジェンダとそれぞれの内容を簡単に紹介しておこう。プレゼンターの名前なんか要らないよ!と思われるかもしれないが、後から見返したときに自分にはとても役立つので、敢えて。

  • Introduction to the SAP Enterprise Architecure Initiative
    • ロペス隊長
    • SAPのEAF (Enterprise Architecture Framework)はSAP, Capgemini, IDS Scheer3社の合作でできたEA用のフレームワーク。the Open GroupのTOGAFがベースになっている。ちなみにこのTOGAF、今回の参加者にとっては「知っていて当然」「認定を取っている人もかなり」という状態で、TOGAFとEAFの差分を中心に説明された*5
    • EAを遂行するためには、(1)人(スキルとリソース)、(2)方法論(根本がEAF。その下部としてASAPや顧客毎のソリューション戦略、ESA Composerなどが位置づけられる)、(3)ツールとプロダクト(ARIS IT ArchitectやSAPのSolution Managerなど)、(4)手順、(5)サービス、(6)トレーニング、の6つが必要と示された。
    • (6)トレーニングに関係して、SAPではEnterprise Architectureの認定制度を作り出したとのこと。Associate(今年6月にリリース), Professional(本年末までにリリース予定)そしてMaster(来年3月末までにリリース予定)となっている。Associateは「eSOA基礎 2日間」「eSOAロードマップ 2日間」「EAF I 5日間」の講習を受け、認定試験。ProfessionalはAssociateを前提資格として「TOGAF 4日間」「ARIS 2日間」「EAF II 5日間」の受講後、認定試験。Masterは特定の講習はなく、EAリサーチプロジェクトを遂行して、口頭試問をパスした者に与えられる、ということだ。ちなみに、これはアメリカで先行するもので、日本での展開はまだ未定。
  • EAF demo in Solution Manager
    • ロペス隊長
    • このアジェンダは飛ばされてしまった。その代り(?)最後のほうでSolution Manager内のEAF ver1.1のデモがあった。
  • ARIS toolset presentation and demo
    • IDS ScheerのPeter Thiele - Senior Solution Engineer
    • デモの内容を文字だけで書くのは難しい。ARISは、VPや各部門トップとITチーム*6の間のギャップを埋めるEnterprise Architectsに有効なツールとなることを目標としている。
    • SAP向けARISの製品構成が新しく11個に再パッケージ化され、本年夏に新しい再販契約がIDSとSAPとの間で締結された。11個のパッケージは↓こちら。
  • Customer Case Study "Enterprise Architecture at Cardinal Health"
    • SAPカスタマである年商$81Billion*7の医薬品メーカー Cardinal HealthのBrent Stutz - Director Enterprise Architecture
    • 会社構造をホールディングカンパニーから、"One Cardinal Health"という旗印の下、Integrated operating company optimizing topdown starting at the sectorsすなわち業務領域ごとにトップダウンに最適化された統合オペレーションが可能な会社に変えた。とともに、ITの考え方もBest of Breed IT Approach いわゆる局所最適なITアプローチからPartnering に変えたという。
    • Enterprise Architectの役割は、先にも述べたとおり、「考え、戦略を資格化して、皆の合意をとる」「誰にでも解るように描く」「社内ポータルで公開する」「進捗を管理する」こと。そのために、同社流のITフレームワークをつくり、社内公開用のEAダッシュボードやEnterprise Roadmapなどに工夫を凝らした。
    • あくまでも、to-be(目標は5年後の2012年モデル)としてのビジネスのやり方がどうあるべきか、の優先順位が高く、現行システムの制約は話としてほとんど出てこなかった(汎用機などレガシーシステムが無いわけではない)。
      • 小さい字で書かせてもらう。日本でこういう議論をすると、すぐに「汎用機の膨大なステップ数のソフトウェア資産が...」「それらがどういう設計で作られているのか解らないので、リバースエンジニアリングをしなければ、何を捨ててよいのかすら解らない」といったas-isベースの話に落ち込んでいくきらいがある。Enterpriseとして、何年後にどういうビジネスとプロセスにしたいのか。それを達成するためにはどういうITであるべきか、を考えるべきだと思う。日本では理論を軽視する風潮があるが、一度、とにかく理論どおりにやってみるという態度が必要なのではないか。個別の(小さな((「小さな」と書くとまた怒られるんだよなぁ。)))問題/障害にはとりあえず目を瞑って「べき論」で進める。少なくともEnterprise Architectureにはその態度が必須だと思うし、会社としてもそういう役割と権限を与えるべきだと思う。
  • The differentiating features of the SAP Enterprise Architecture Framework?
    • SAP AmericaのJin Son, Principan Enterprise Architect
    • ベースとなったTOGAFとSAP EAFの違いが示されたが、TOGAFに疎い自分にはよく実感できなかった。
    • 冒頭Enterprise Architectはスーパーマンなのか?という命題が示された。多方面に精通しなければならないことを考えても、正にスーパーマン。ITを志す人が皆憧れるステータスを持たせたいものだと考える。

  • ここで45分間のランチをはさんで

  • Meeting the needs of stakeholders with SAP EAF: how to structure the architectural information
    • SAP AmericaのJoe Kebleski, Principal Enterprise Architect
    • 前述の95%:5%が紹介されたセッション。
    • Enterprise Architectステークホルダー達。ステークホルダーとはすなわち、会社の構造・プロセスにかかわる全員ということは、社員だけでなく、社外取引先なども含めた非常に大きな概念であり、多数の人がその対象になることになる。
    • 彼らとコミュニケーションをとる時にどうすべきか。「完全な一枚図面」であらゆる人々に理解させることは不可能。CEOにはCEO向けの、経理担当者には経理担当者向けの、IT技術者にはIT技術者向けのViewが必要となる。「完全な一枚図面」からそれら必要なViewを切り出すことが用意にできなければならない。それを可能にするのが SAP Enterprise Modeling by IDS Scheer である。
      • このセッションは共感できるところが多かった。巨大建造物を設計する建築士になぞらえて理解することが可能だからだろう。基本的な設計図から、いろいろなパースを描き起こすのに似ているからだ。正に企業構造建築士ではないか?
  • SAP EAF: a governance model to ensure the successful adoption of enterprise SOA
    • Jin Son
      • どうもJin Sonのプレゼンテーションは低音で格好つけた話し振りが眠気を増幅する。時間帯が日本時間の朝6時ころということもあり、猛烈に眠かった。
  • How the SAP EAF supports an Enterprise SOA roadmap
  • Key EA tools presentation and Live demonstration of ARIS IT Architect for SAP EAF
    • 同じくAndrew LeBlanc
    • これら2本のセッションは連続して。やはりデモンストレーションが印象に残っている。
      • 最近、非常に苦戦した商談があった。EAFとESA Adoption Programを併せて、enterprise SOAとEnterprise Architectureの見通しを視覚化して説得することが出来ていなかったことが大きな原因のひとつ。ここでAndrewが見せてくれたデモを見せられれば、お客さんも納得してくれたと思う。
  • EA Service Offering: How to get started?
    • ロペス隊長
    • Solution Managerを使って、EAF1.1のデモ。まもなく2.0がリリースされるだろう。
  • Wrap-up
    • ロペス隊長
    • 本ブートキャンプに関係する、明日からのセッションは、SOA232/205/229/202/104/219とのこと。

*1:古澤の造語

*2:CEO, COOといったCxOレベルのエグゼクティブとも、彼らの言葉で話さなければいけない。一方、現場のエースから選抜されるBusiness Process Expert(BPx)とは、生産管理なら生産管理、会計なら会計の言葉で、IT部門の技術者とは技術用語でコミュニケーションをとらなければいけない。社内にGeekがいたら、彼/彼女とのコミュニケーションは骨が折れるだろうな。Geekに馬鹿にされたら仕事にならないから...

*3:ちなみにサワリとはイントロのことではない。もともと長唄などで使われている用語だが「サワリを聴かせる」とは「一番おいしいところ(サビの部分)を聴かせる」という意味である。

*4:このアンケートはSAP社員、パートナー社員は対象外なんだ。

*5:だから辛かった。

*6:ここで面白いけどちょっと腹の立つことを言っていた。SAP関係のITチームは「SD, MM, ABAP....」といった"SAPanese"を話しているので、他の部署の人間にはさっぱりわからない.....って、結局、日本人が「わからんやつ」ということで揶揄されているとしか思えん。

*7:ということは9兆円以上!マヂ?